電撃ピリピリ!マッサージ

ある日、知り合いのトラベルガイドのOさんが電話してきて「じろさん。すっごいマッサージがあるから体験してみません」と少し興奮気味にいうのである。どんなマッサージか聞いてみると、「ビックリするくらい効く」といい、それからビリビリするのだそうである。あんまり勧めるので怪しいなと思いつつも体験することとなり、そのマッサージ店に行くことになってしまった。

シーロムビレッジという観光エリアの裏手に大きくて綺麗なタウンハウスがあり、下の階はアンティークショップになっている。その建物は、上の階に新しくスパ・マッサージ店を開店準備中だそうである。オーナーは、ポルトガル人とバリ人というなんともタイでも不思議な組み合わせで、店内はゆったりとして、瀟洒な感じのアンティークショップと大理石など用いたフロアでスパ店としても少し高級感があるつくりになっている。

そしてビリビリマッサージをしてくれる先生は、バリから来ている達人と紹介された。バリに本拠地を置く大型の施設があり、先生とそのお父さんの2人しかこのビリビリ施術は行えない特に難しいものだということを説明された。

詳しく聞いてもどんなマッサージかわからないので早速体験して見ようということになり、上半身裸になって椅子に座った。カンフーの達人の様な格好をした先生が背後に座りすっとと指先を背中に触れたとたん、ビリビリとするのである。

まるで電流でも流れているような刺激にビックリしていると、ビリビリの強弱をつけて背中のポイントを指圧していくのである。「あー、これは低周波治療器みたいなものを手にもって触ってるんだな~」なんて思って手をみると「あれ、なにも持っていない??」のである。それにしては、ビリビリが先ほどから強めになって体の中にグイグイ指がはいっているのである。時折先生は、水で手をぬらし滑らかに背中を触るのだが一体どうなっているのだろう。

そしたら、やっと見つけた。先生の足元に伸びる電気のコード。その先は、部屋のコンセントにつながっている。でも、装置らしきものは見つからない。もう一本の線がぼくの足元のぬれた雑巾の下につながっていた。その間に装置らしきものはない。ということは、ダイレクトに220Vの電流を先生を通して僕に流しているということになる。途中でそのことに気づき、先生に「これって危なくないの?」って聞いてみた。すると「ぼくがコントロールしているから大丈夫」という。

途中から感電の不安におののきながらも肩こりがすっかり取れてしまった。精力が回復するって聞かされ、追加で股間にも電気を流してもらった。玉ビリビリである。電気って色んなものに使えるのだと思った一日であった。外は、晴れていた。


この記事は、2002年~2015年に雑誌掲載されたものに、加筆修正をしたものです。記述内容が当時のものであり、現状と違う部分が含まれています。